吸血鬼の手帖

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† ドラキュラ伯爵 ルーマニアにおける正しい史伝

原題:VLAD TEPES - Prince of Walachia
作者:ニコラエ・ストイチェスク
訳者:鈴木四郎 鈴木学
発売:中央公論社 中公文庫(&中公文庫BIBLIO)
初版:1988年09月10日
価格:456
頁数:323
注:画像&リンク先は中公文庫BIBLIO版 『ドラキュラ伯爵のこと』(1980年07月20日恒文社)の改題
 ブラム・ストーカーの名高い伝奇小説『吸血鬼ドラキュラ』のモデルとして世界的に知られる、ルーマニアのワラキア公ヴラッド・ツェペシュ伯爵とは何者なのか――。祖国の統一と独立に献身したワラキア公の業績を歴史的に究明し、フィクションの「ドラキュラ」との差違にも言及する、出色の評伝。
 日本で発売されているヴラド・ツェペシュに関する数少ない書籍。
 『吸血鬼ドラキュラ』のモデルとしてではなく、実際のヴラド公がどのような人物で会ったのか知る事ができる一冊。

 ただ、学者向けではなく一般人向けに書かれた本とはいえ、日本人が読むと多分混乱します。
 年表と当時の地図は巻末に掲載されているものの、人物相関図がありません。頑張って自分でぐりぐり書くという手もあるにはあるんですが……。ヴラド・ツェペシュの関係者って同じ名前を持った別の人物がかなりいます。
 例えばヴラド・ツェペシュの父親は“ヴラド”です。弟も“ヴラド”です。子供も“ヴラド”です。さらにヴラド・ツェペシュの祖父は“ミルチァ”です。お兄さんも“ミルチァ”です。弟も“ミルチァ”です。子供も“ミルチァ”です。孫も“ミルチァ”です。
 本書の中でこの全員が取り上げられているわけではありませんが、こういった家系図を全く知らない状態で読み始めると、同じ名前の別人が出てきたところで混乱するかと……。
「老公」とついたら祖父のミルチァ! とわかるのが前提、みたいな感じなんでしょうか。
 父親のヴラド・ドラクルの表記は「ヴラッド・ドラクル」が基本ですが、たまに文脈の繋がり上「ブラッド・ドラック」になっていたり。弟のラドウも「ラドウ美男公」だったり単に「ラドウ」だったり。これに限らず表記の揺れがあります。さらにいろいろな歴史研究文献から文章を引用してきているので、引用文の中ではもうバラバラ。
 ルーマニアに住む人ならそれでもパッと分かるのかもしれませんが、我々日本人ではその辺りいかんともしがたく。

 時代背景を少しでも知っていると、読みやすさが大分違います。多分。
 ルーマニア&ハンガリー&オスマン・トルコの歴史、それらの周辺国、できればヨーロッパ全体の歴史についてある程度の知識or興味が欲しいところ。別に専門的な知識でなくても、吸血鬼関連の真面目なサイトを回って事前知識を得るくらいでもかなり理解の手がかりになります。

 ぶっちゃけ、単に「吸血鬼が好き」というだけでいきなりこの本に取り掛かると、読んでいる途中で「ウガー!!!」と本を放り投げたくなるかもしれません。えぇ、なりました。なりましたよ。最初に読んだ時は。何年前だったか覚えていませんが。

 まぁ、それらのことを差し引いてもなお押さえておきたい本です。

 真面目な研究者肌の方の反論覚悟で書きますが、『ドラキュラ公 ブラド・ツェペシュの肖像』みたいな小説を先に読んでおくと、幾分か頭に入りやすいと思います。
 あと、少々値段が上がってしまいますが、著者が日本人ということもあってか『ドラキュラ公 ヴラド・ツェペシュ』の方がほぼ同内容で読みやすいです。若干違う見解が示されている部分もあります。

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コメント

私はドラキュラになりたい
ドラキュラの方==管理者により削除==にきて
血を吸って下さい。

こんなところで個人情報出しても誰も来ないと思いますよ。
あとドラキュラは個人名ですので、なるのは多分無理だと思います。

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