† リビングデッド・ファスナー・ロック
その村では、呪いを受けた胎児は生誕を拒み、子宮で首を吊るという。
母胎に己の「死」を置き去りにした赤児は、限りなく不老不死に近い存在となる――。少女の名は水祭甲。
呪われた不死者「ハカナシ」にして、またの名を”血祭御前”。事件の始まりは、着ぐるみが如く加工され、
腹部に「ファスナー」を縫いつけられた美しき女性の死体だった……滅びた村に伝わる忌まわしき伝承を復活させようと暗躍する異類の者たち――。
闇に取り憑かれ悪を為す不死者たちを、正義の殺戮者”血祭御前”が斬って斬って斬りまくる!
もしかしたら吸血鬼モノか? 半々だなぁ、と思いながら購入。
結果的にオーソドックスな吸血鬼とは言い難い部類でしたが、血を飲むシーンや吸血鬼に関しての言及もあるので、不死者ネタが好きの人なら。
ただし、猟奇系が嫌いだと駄目かもしれないです。
個人的な感覚としては大した猟奇ではないんですが、死体にファスナーがついていたりあまつさえ開閉可能だったり死体の皮をほにゃららら(一応伏せます)というようなものに嫌悪感がある人にはお薦めしません。
しかも全体的に、読んでいてスカッとする話ではない、むしろちょっと後味悪いタイプ。
1冊で区切りがついているものの、おそらく続刊はあると思います。
しかし続いてもカタルシスが得られる気がしない……。
母胎に己の死を置き去りにしたがゆえに限りなく不死に近い存在、墓無し。あるいは果敢無し。
全く吸血鬼と別物かと思いきや、血を分けて仲間を(擬似的にであれ)増やせたり、驚異的な身体能力を持っていたり、歳を経る程強くなっていく年功序列制であったりと、一般的な吸血鬼イメージとだぶる部分が多いですね。
文章自体は嫌いではなかったんですが、登場人物の性格がたまに豹変するのが馴染めなかったです。頭の中でキャラのイメージが固まらないというか。
普段強がっている人がポロッと見せる弱さ程度ならともかく、描写が行き過ぎているのか別人格に見えてしまって。
しかも1キャラくらいならそういうキャラなんだなと納得するんですが、複数だと微妙。
といろいろ文句を書いていますが、面白いには面白かったです。
あと一押し何かが足りなかったけど、出てくる設定自体は好み。
しかしちょっとラノベからは足を踏み外しているような……ガガガってそういう方向性なのかな。
そういえばシリコンドールを本物の死体と間違えて警察出動って去年でしたっけ? そのネタ仕込まれたらニュース思い出して笑うしかない。
しかし、非現実の物語の中に微妙に現実を織り込まれると何だかドキッとします。