吸血鬼の手帖

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† 屍鬼5

作者:小野不由美
発売:新潮社 新潮文庫
初版:2002年03月01日
価格:629
頁数:478
 村人たちはそれぞれに凶器を握り締めた。「屍鬼」を屠る方法は分かっていた。鬼どもを追い立てる男たちの殺意が、村を覆っていく――。
 白々と明けた暁に切って落とされた「屍鬼狩り」は、焔に彩られていつ果てるともなく続いていった。
 高鳴る祭囃子の中、神社に積み上げられる累々たる屍。その前でどよめく群れは、果たして鬼か人間か……。
 血と炎に染められた、壮絶なる完結編。
 怖いのは屍鬼じゃない。屍鬼も村人もひっくるめて、「人間」が怖い。

 5巻の出だしは、気持ちいいですよ。
 4巻でぐだぐだしていた村人たちの気持ちが、敏夫の機転で一気に変化し、団結する。
 その瞬間は、喝采を送りたいようなそんな感覚なのだけれども、すぐにそれが不安に取って変わられる。
 不安は不安でも屍鬼が勝つんじゃないか? という不安ではないところがポイントで。
 目の前に、明確な「敵」が現れた時、人間の集団はかくも恐ろしいものなのか。
 昼間、動けない屍鬼を次々と隠れ家から引きずり出し、杭を打つ。
 それが自分の知り合いだろうと、家族だろうと、相手はもう人間ではないから。
 ちょっと前まで「起き上がりなんているわけない」と言っていた人たちが、杭を打っていく。
 相手が生きた人間であっても、倒してしまう。狩人の言うことを聞かない相手は屍鬼かもしれないから。
 村人たちが振り翳したのは、凶器であると同時に狂気でもあるのではないでしょうか。

 無論、一括りに「村人」と言ったって、屍鬼を倒すことに疑問を抱かない者、迷いながらも参加する者、途中で耐え切れずに脱落する者、最初から参加しない者、といろいろな人がいて。
 狩られる側に回った屍鬼は屍鬼で、踏みとどまって対決しようとする者もいれば、逃げようとする者もいる。
 自分の罪を悔いて、村人が自分を狩りにくるのをじっと待っている者もいる。

 悪を倒して大団円という単純な結末にはたどり着きません。
 だから、すっきりとした結末を望む人には向かない作品かもしれません。

 ただ、読み終わった時、振り返るように何かを考えさせられる作品だと思います。
 吸血鬼が好きなら読んで損はないかと。




 とまぁ真面目っぽい感想を書いておいてアレですが、一言だけ叫びたい。
 静信の最初から最後までの優柔不断っぷりはさすがに鬱陶しいわ!

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