† 百年の満月1
美しくてやさしい、まるで守護天使のようなその人を見て、僕を育ててくれたツィガーヌの老女は、震える唇で「ミュロ」と忌まわしげに呼んだ。
「あれは生ある者ではない」と……。
その青年・ヴィクトルとの出会いから、僕の周辺では奇怪なことばかり起こるようになった……。
カフェ・イリスでしがないピアノ弾きをしている僕。
貴族の家を捨て、二度と人前でヴァイオリンを弾かないと決めた僕。そんな僕にヴィクトルはある曲をヴァイオリンで弾いてくれという。
十九世紀末のパリを舞台に、華やかで恐ろしい物語の幕があがる!!
1巻では吸血シーンらしい吸血シーンは無いですが、吸血鬼らしいといえば吸血鬼らしい吸血鬼。
「吸血鬼といえば夜会服を着た貴族でしょ!」
というイメージを抱いている人にはピッタリ。
人は死ぬし死体描写もあるしあまり明るくない話なんですが、その割りにのんびりした雰囲気で全然怖くないです。
どっちかっていうと主人公リュシアンのネガティヴさでジメジメします。
この巻ではその後ろ向きっぷりの原因ははっきり描写されず、匂わせる程度なので余計にジメジメと鬱陶しいんですが、巻が進めばその辺も出てくるんだろうし。
暗い割に妙に子供っぽいのも性質悪いギャップ楽しめってことかしら。
もう一人の主人公格ヴィクトルもイマイチ性格掴みづらい言動が多いし、どんな方向性の本なのか、全体的にぼんやりした印象でした。
もう7年くらい前の本で、既にシリーズは4巻で完結しているのがわかっているせいもあるのかもしれませんが、次の巻を読まなきゃ! っていう焦燥感は湧かなかったなぁ。
続きもぼちぼち読もうかな、くらい。
とりあえず可もなく不可もなく、でした。