† 百年の満月1
美しくてやさしい、まるで守護天使のようなその人を見て、僕を育ててくれたツィガーヌの老女は、震える唇で「ミュロ」と忌まわしげに呼んだ。
「あれは生ある者ではない」と……。
その青年・ヴィクトルとの出会いから、僕の周辺では奇怪なことばかり起こるようになった……。
カフェ・イリスでしがないピアノ弾きをしている僕。
貴族の家を捨て、二度と人前でヴァイオリンを弾かないと決めた僕。そんな僕にヴィクトルはある曲をヴァイオリンで弾いてくれという。
十九世紀末のパリを舞台に、華やかで恐ろしい物語の幕があがる!!