吸血鬼の手帖

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† ドラキュラ公 ヴラド・ツェペシュの肖像

作者:篠田真由美
表紙:弥未純
発売:講談社 講談社文庫
初版:1997年10月15日
価格:562
頁数:356
 何十万もの人間を生きたまま串刺しにしたとされるワラキア公ヴラド。
 その残忍さゆえに小説「吸血鬼ドラキュラ」のモデルとなった男の真実の貌とは。
 強大なオスマン・トルコ帝国を相手に孤独な戦いを挑み、過酷な時代を疾風の如く駆け抜けたもうひとりの“織田信長”の実像を人気の女性作家が描く異色長編。
 賛否両論ありそうな本。でも私は好き。

 ドラキュラ伯爵のモデルになったワラキア公“ヴラド・ツェペシュ”の波乱万丈な生涯を描いた歴史伝奇小説。
 あくまでも「伝奇小説」、伝記ではありません。相当フィクション混じっています。特に後半。
 が、史実部分も結構詳しいのでヴラド・ツェペシュにちょっと興味が……なんて人におすすめ。
 ドラキュラ伯爵(あえて吸血鬼とは言わない)ヲタならしょっぱなでまずワクワクできます。

 ただし、根っからの歴史好き、ヴラド信望者にはおすすめしない。
 賛否の「否」の方にもろにぶち当たると思いますので。

 でもまぁ、今でこそヴラド・ツェペシュ=ドラキュラ伯爵のモデルってのも吸血鬼好きなら普通に知ってるレベルだし、調べようと思えばネットでだって山ほど資料にあたれるけど、この本が出た当時の事を考えれば、これだけ史実ネタ盛り込めば十分かと。
 これ以上の詳細な歴史ネタを望むなら、素直に歴史書買うべし。所詮小説は小説であり、小説は小説らしく楽しめばいいじゃありませんか。

 そんなわけで、この本は2回読むと楽しい。
 まずブラム・ストーカーの『吸血鬼ドラキュラ』を読む。ここはまぁ当然の嗜み。ストーリーは知っていてもきちんと読んだ事は無いって人はこの機会に是非。
 次に歴史知識は無しで小説としてこの本を読む。
 その後、『ドラキュラ伝説 吸血鬼のふるさとをたずねて』や『ドラキュラ ルーマニアにおける正しい史伝』や『ドラキュラ公《ヴラド・ツェペシュ》』のような資料を読んで、ヴラド・ツェペシュ&ルーマニア近辺の知識を頭に入れる。小説で多少歴史の流れと登場人物の名前に親しみが持てている(はず)なので、いきなりお勉強するより、資料も読みやすい(はず)。
 満を持して、歴史上のヴラド・ツェペシュと創作のヴラド・ツェペシュの相違を楽しみつつ(つっこみいれつつ)2度目を読む。
 いやもう本当に楽しいですよ。一粒で二度美味しい。
 これで、後半のあの流れがなければなぁ。残り3分の1過ぎたあたりで急にフィクション比重があがるので、そこだけ残念です。最後まで中盤まで程度の創作織り交ぜ具合でいってくれれば良かったのに。

 同じような系統の作品で『ドラキュラ・イン・ブラッド』という映画もあります。よくレンタル店に行くと、間違えて(わざと?)ホラーコーナーに置かれてます。こちらもおすすめ。

 って、この本amazonで在庫が無いんですが……まさか絶版とか……そんなことは……

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