藤崎竜の『屍鬼』が出た流れで、何年ぶりかの再読。
　やはり面白い作品は時代を越えて面白いのだと再認識。

　上巻のうち半分近くまでは物凄く淡々。
　永遠に続くかと思われる平凡で、退屈で、そして愛すべき日常の風景。
　町の住人はどこにでもいるような極々普通の人々。
　読者からすれば退屈とも感じられる前半部分が過ぎると、ひとつ、またひとつ、その風景が綻びはじめます。
　それまでに描かれた日常が、あまりにも日常であるがゆえに、そこにひっそりと入り込んだ異物の存在が怖く見えます。

　巻末の初版年月日見たら、上下巻同時刊行じゃなかったっぽくて驚きました。てっきり同時だったのかと思い込んでましたよ。
　これ、リアルタイムで買って1ヶ月待たされた日には、私だったらじれったいどころじゃ済まなさそうです。