吸血鬼の手帖

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† 地球最後の男

原題:I am Legend
作者:リチャード・マシスン(Richard Matheson)
訳者:田中小実昌
発売:早川書房 ハヤカワ文庫NV
初版:1977年09月15日
原語版初版:1954
価格:485
頁数:259
 空が薄暗くなってきた。また夜がくる。ロバートはゆるんだ羽目板を直し、発電機を点検した。もうじきやつらが集まってくる。暗くなるとすぐに……。やがて夕食を作り終えたとき、やつらの声が聞こえてきた。「出てこい、ロバート!」突然蔓延した吸血病によって地球はその様相を一変した。生者も死者も吸血鬼と化した悪夢のような街で、ただひとり病を免れたロバートは、絶望的な戦いの日日を送る。だがそんなある日……
 私個人の趣味でSFが好きなもので、この作品は大変面白かったです。読み終わったその時原題の“I AM LEGEND”という言葉の意味が嫌というほどわかります。
 とにもかくにも狩る者と狩られる者の立場が逆転したらどうなるのか。いまこの世の中の多数を占めるのは“人間”であり、その中に“吸血鬼”が存在するとしたら狩られるのは少数派である吸血鬼になることに疑う余地はありません。でも、もし世の中に人間よりも吸血鬼の方が多かったら……?
 想像してみてください。あなたはこの世に残された唯一の人間です。他に生き残りがいるかどうかは確かめられません。生き延びるためには夜毎訪ねてくる吸血鬼を退け、昼間には杭を持ち自分以外を殺戮してゆくしかないのです。
 ではその逆だったとしたら?
 あなたは吸血鬼です。あなたが昼間ゆっくりと安眠を貪っていると、手に杭を持った人間が突然襲ってきます。その時あなたはどう感じるでしょう?
 さて、吸血鬼と人間、どちらが本当の怪物なのでしょうね。
 藤子不二雄の『流血鬼』はこの作品へのオマージュ。

 絶版の予感。
 映画化に合わせて『アイ・アム・レジェンド』のタイトルで翻訳も一新して復刊しました!(2007年11月)

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